災害ボランティア登録の歴史

サイボウズ災害支援チームの柴田哲史です。

 

新型コロナウイルスの感染対策として、不特定多数のボランティアさんが受付に参集して密にならないように、各市町村で事前のボランティア登録が推奨されています。そこで、Withコロナ時代の災害ボランティア登録の仕組みを考えるにあたり、今までのボランティア募集の歴史を振り返ってみました。

参照:過去の災害情報(全社協 被災地支援・災害ボランティア情報)

FAXと電話の昭和スタイル

 

一昔前の典型的なボランティア募集方法は、FAXや電話での受付でした。大量のFAX(ハガキも)が送られてきて、電話・ハガキ・FAXで受け付けた記録を手分けして一覧表に整理するという大変時間のかかる作業が必要でした。

 

エクセルが日本で使われ始めたのが、1980年代後半。まだまだワープロ専用機が全盛だった時代で、フォーマットも各社バラバラ。ネットもメールも普及していなかったので、入力された情報は、フロッピーディスクで管理されていました。

 

インターネット前夜の平成スタイル(前期)

 

1995年(平成7年)Windows95の発売をきっかけに、パソコンやメールが一般家庭で使用されるようになってきましたが、インターネットによる情報発信ができるのは一部の先進的ユーザーに限られ、情報をデータベースに登録して活用するのは、ごく一部の研究者しか扱えず、一般家庭でようやく住所録を年賀状印刷ソフトに入力する人々があらわれ始めたのがちょうどその頃です。

 

その年に起きた阪神淡路大震災の被災地情報は、一部のユーザーとはパソコン通信で連絡を取り合っていたものの、インターネット(当時のブラウザはMosaic)を通じて被災地の様子を知ることはほとんどできませんでした。

 

スマホとネット全盛の平成スタイル(後期)

 

それから15年以上たった2011年(平成23年)東日本大震災あたりからインターネットが活用されはじめました。当時、東京都調布市に開設された味の素スタジアム一時避難所では、特設サイトで避難所の様子を確認することができ、ボランティアや物資募集にWebフォームが活用されています。さらに、2013年(平成25年)伊豆大島での水害時には、特設サイトへのモバイルからのアクセスが4割を超え、Facebookページがボランティア募集や毎日の活動報告に活用されはじめるなど、被災地からの情報発信のスタイルが大きく変わりはじめた年でした。

 

それから数年後、2016年(平成28年)南阿蘇支援ボランティア竹田ベースキャンプ、2017年(平成29年)朝倉市災害ボランティアセンター、2018年(平成30年)厚真町災害ボランティアセンターでのボランティア登録にもWebフォームが活用され、だいぶ一般化してきましたが、ボランティアへの活動案内や日程調整には、まだまだメールや電話で大変な手間がかかっていました。

Withコロナ時代のボランティア登録

 

2019年(令和元年)台風15号千葉県特設サイト台風19号長野県特設サイトをはじめ、全国各地の被災地からの情報発信は、WebサイトとFacebookページが当たり前のように活用されるようになりました。Googleフォームなど簡単にWebフォームを作成できる無料ツールも増えて、誰もがWebフォームを扱える時代となりました。

 

2020年(令和2年)は、新型コロナウイルスが世界を席巻し、避難所や災害ボランティアセンターでも感染症対策が必須となりました。7月には全国社会福祉協議会から新型コロナウイルスの状況下における衛生に配慮した災害ボランティアセンター運営上の留意点【第1版】(PDF)が公表され、「感染及び感染拡大リスクを低減するため、不特定多数のボランティアが参集 して密な状態を作らないなど、Webによる事前申込制の検討」が促されています。

 

ここで大切になってくるのは、Webフォームでのボランティア募集が一般化された先に待ち構えているのは、ボランティアへの活動案内や日程調整といった大量のコミュニケーションになりますので、それらを含めて最適化を考えることです。

 

かえって多くのボランティアとのやり取りが発生してしまい、担当職員の負担が増大しないように、担当者が代わってもきちんと情報が引き継がれるように、Withコロナ時代の災害ボランティア登録の仕組みを考えていきたいと思います。

 

 

(つづく...)